ハエの発生場所は種類によつて異なりますが、概ね下表に示したような場所から発生します。成虫の活動場所は概ね幼虫の生息している場所が中心ですが、休憩場所は、屋内に入る種類では天井が多く、イエバエやキンバエ等は、ぶら下がった紐状のものによく止まります。野外では樹木や草の葉に休息しています。ハエの飛距離は、20kmと言われています。大発生した時などに海上の埋立地から対岸まで飛んで来ることがありますが、陸地伝いの場合は、一度に遠距離を飛ぶのではなくて、小刻みに移動するようです。
 
   
 
種類 特長と生活 発生源
小型〜中型で、黒灰色腹部の基部に黄色の斑がある。日本全土に分布し屋内で最も普通に見られる種類である。南日本ほど、また都市より農村に多い。 ゴミ箱、堆肥、畜舎(牛、馬、豚)
鶏舎等
小型で、体型は細長く、黒灰色のハエで、日本全土に分布し、屋内で最も普通に見られる種である。また、イエバエとは逆に北日本ほど多い。高床式鶏舎で大量に発生し、駆除が難しく問題になっている。 便池、漬物桶、畜舎、鶏舎
中型で胸背に明瞭な黒いたてじまがある。日本全土に分布し、便池発生のウジはほとんどが本種である。発生は盛夏の7〜8月に多い。 便池、動物の死体
紫がかった大型のハエで、体は丸味を帯び一面に毛がある。日本全土に分布し、発生はニクバエとは逆に北海道と高地を除いては7〜8月に一度姿を消す。
便池、ゴミ箱、動物の死体
小型のハエで体に比べ脚が長い。厨房、台所のほか食品工場で大発生し異物混入で問題となる。 漬け物、腐熟した果実・野菜等
 
   
 
1.病気の媒介
 ハエは人の生活圏の近くに居て、食物や排泄物に関わり合いを持っているため、消化器系の赤痢、チフス、コレラ、O-157等の病原菌のほか、皮膚疾患、目の疾患の病原体、赤痢アメーバ、寄生虫卵、さらには、ポリオウイルスの伝播というように実に幅広いものがあります。

2.ハエ蛆症
 人の体内や皮膚などに幼虫が潜り込んで、組織や体液、消化器官内の消化物などを食べて人に害を与えるもので、寄生性のものと偶然入ってしまって起こるものとがあります。真寄生性のハエは日本にはいませんがアフリカに行くと皮下に寄生して組織を食べる種類のハエがいて、現地で感染することがあります。消化器系ハエ蛆症というのは、ニクバエやキンバエ、クロバエ、ノミバエの幼虫が食物と一緒に消化器内に入り、粘膜を刺激し、腹痛を起こさせるものです。耳ハエ蛆症というのは、耳の膿やリンパ液などにハエが産卵、産仔し、蛆が生育し、出血や痛みなどが生じるものです。皮膚ハエ蛆症というのは、手術後の傷口や外傷のガーゼ、包帯などに産卵、産仔し、そこで発育することによって起こります。

3.不快感
 昔と違い、現在はハエが一匹入って来ても不快感を覚えるようになったため、牛舎、豚舎、鶏舎やゴミ処理場からハエが周辺の民家に飛来すると、大きな問題に発展してしまいます。

4.汚染・混入
 ハエが商品を汚染したり迷入したりして、特に食品工場などで経済上の被害を与えることが多くなっています。
 
   
 
1.幼 虫 対 策
 通常、有機リン乳剤の200〜400倍希釈液を1平方メートル当たり1〜2L均一に散布します。幼虫の住んでいる場所に充分行き渡らせることが必要です。簡易水洗トイレの場合、後で水を流して希釈すると云って、原液や濃い液を使用すると、塩ビ管の継目が侵されて水漏れを起こすことがありますから、必ず所定の濃度に希釈してから流して下さい。ゴミ処分地や焼却場、畜舎の糞と堆積や敷き藁が混ざった場所や堆肥なども乳剤をたっぷり散布します。最近は有機リン剤に対する抵抗性が発達した場所(畜舎等)が多いので、そう言った場所にはIGR(昆虫成長抑制剤)を使用します。ゴミ焼却場の貯蔵施設にある幼虫駆除用設備では、薬剤によってプラスチックが侵される心配がありますので、薬剤に含まれている溶剤の選択が必要です。

2.成 虫 対 策
 ハエ防除の基本は幼虫対策ですが、ゴミ処分地では厨芥がビニール袋に入っているため薬剤が浸透しないこと、また畜舎(特に鶏舎)では、鶏糞に多量の水をかけると後で乾燥させるのが大変なので、そのような場所では成虫対策を中心に防除します。乳剤の10〜20倍希釈液を噴霧したり、濃厚液の微粒子少量噴霧(ULV)を行います。抵抗性の発達した場所(特に畜舎)では、ピレスロイド系の薬剤を使用します。O-157は、イエバエが運ぶことが明らかになっていますので、給食センター、食品店、食品工場等では、自営手段を講じる必要があります。殺虫剤の残留噴霧やUVL等の方法を、安全性に留意し、時期や場所を限定して行います。網戸や電撃殺虫機等を併用するのも良い方法です。
 
 
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